95周年を記念したコラボブランドのデザイナーと、PARIGOTバイヤーのスペシャル対談第1弾。
本日は、THE Dallas(ダラス)を2019AWを持って終了し、自身の名前を冠した益々大注目の新ブランド FUMIE=TANAKA(フミエタナカ)
デザイナー・田中文江氏の考えるFUMIE=TANAKAのモノ作りやコレクションに対する想いをインタビュー。
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「〈ダラス〉という一つの“ブランド”になってしまって、“自分の発想をそのフィルターを通さなきゃいけない”という感覚に陥ってしまって。ブランド名を変えることは、本当に凄く葛藤しました。でも、〈フミエ=タナカ〉という自分の名前にした方が、もっと自分の気持ちや思いを素直に落とし込めると思って決意しました。」
「メンズもスタートすることもあって、旦那性の「タナカ」がメンズ、そして自身の名前「フミエ」がレディース。イコールで繋ぐ事で、メンズを女性が着るのもレディースがメンズを着るのもアリ、ファッションは自由だという事も表現しています。例えば全然違う業種とコラボするとか、誰かと=で繋がるわけだし、イコールっていろんな意味で強いと思います。もし×(カケル)だったら、○○×○○のようにコラボレーションで出来上がったもの同士が掛け合わさっている感じがしますが、=(イコール)だとそのブランドと同じ立場で、なんだか×(カケル)よりも一体感を感じられる気がします。」
「ブランドが生まれて、まさにヌード、裸です。自身の感性で考えた時に、ナチュラル・肌馴染みの良さ・着心地の良さ、そこに凄く興味がありました。〈フミエ=タナカ〉のベーシックカラーはベージュです。うちに来れば必ずベージュアイテムが見つかる。それがテーマで、今後にも繋がると思っています。自分の気持ちと感覚、そしてブランドとしての裸の状態という意味を込めたテーマなんです。ピンクベージュや黄味の強いベージュ、色んなベージュがありますが、〈フミエ=タナカ〉は、肌に近い、肌馴染みの良いその時のテーマに沿ったベージュです。昔からヌメ革アイテムも作り続けてきましたしね。」
「小さい頃から服が大好きで。リカちゃん人形や着せ替え人形の着せ替えセットも、自分で作ったりデザインをしていました。小学生の時から見様見真似で自分で服も作ったりしていました。母の仕事柄、着物の帯の綺麗な生地の切れ端をキレイだなぁってずっと貯めたりしていました。何かのきっかけというより、単純に服が子供の頃から大好きで、私は絶対デザイナーになると小さい頃から決めていたんです。そのまま全くブレたことがなかったです。高校で美術・色彩の専攻を受けて、その後服飾の専門学校に進みました。」
「映画や音楽ではなく、人から得ることが多いです。人の髪型、メイク、ファッションを見てですね。人間観察をよくしています。後は、化粧品売り場から。例えばリップのテスターを広げた時に、赤は全く減ってないけど、ベージュはすごい減っているとか。アイシャドウのテスターの減りを見て、今の皆の気分はこういうカラーなのかなって。全て生活から繋がっています。」
「10年前に誕生して、現在もずっと作り続けているアイテムです。なぜ葉っぱだったかというと、リーフのパーツがたまたま革屋さんで落ちているのを見つけて。
それは元々レザーではなかったんですが、これをレザーで作ったら面白いなって思って、実際作ったら凄く可愛く仕上がって。何かで使いたくて、色々当てたら、耳が1番可愛くてイヤリングにしました。花にするとフェミニだし、丸や四角にするとポップなイメージになってしまうけど、意外と葉っぱだとどちらのイメージにでも振れる。やっぱり誰でも見たことのある、親近感のあるモチーフだからですかね。そしてレザーは、ただ作って終わりではなくて、使っていく内にそれぞれの人によって経年変化で色が変わって、それを最後まで楽しめるのが良いですよね。」
「人って毎日気持ちが違うし、ファッションのテイストも違う。今日は真っ直ぐにシャープにしたいとか、今日は曲線で女っぽさを出したいとか。ちょっとしたニュアンスだけで雰囲気を変えられると面白いなと考えて、自在に変化させられるこの素材を選びました。」
「その日によって変わる1点もののヴィンテージのような感覚。それも、誰かが作ったものじゃなくて、自分が曲げ方を作れるというのが重要ですね」
田中さんにお願いして、「今の気分」で、形を作っていただいたのがこちら。特殊な合金は柔らかく、女性の手でも簡単に形が作れます。
「自分のデザインした服を、同じスタイリングで2回以上絶対に着ません。大事な服はいっぱいあるので、何度も着ますが、同じスタイリングは2回以上しません。こんなに毎日があるのに、同じスタイリングを着ている自分が嫌で、本当は365日違う服を着たいなと思ったりします。」
「自分のことではなく、“常に誰かの為に”と考えていることですかね。常にお客様、相手のことを考えて、自分は相手の為に動いています。それが最終結果となって返ってきたりしますね。せっかくなら、人の為に働きたい、人の為に生きたいと思います。」
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終始温かさと愛に溢れた対談でした。まるで冬にヒーターの前にいるかのような。
人に対して、ファッションに対して、フミエさんを取り巻く様々なものに対しての愛情と思いやり。
毎シーズン展示会に来場した人との会話を大切にし、そこからその先にいらっしゃるお客様の気持ちを読み取ったり、即その感覚をものづくりに反映させたり。
今回お話させて頂いて、人に愛されるファッションはこうやって生まれていくのだなと感じる事が出来ました。
(INTERVIEWER:パリゴバイヤー 新内)